緊張と緩和で笑わせる|笑いの法則「キンカンの法則」を活用しよう

笑いの法則は実にシンプル

お笑いの法則を知っておけば、場の空気に合わせて臨機応変に活用するだけで、面白い話ができるようになります。
有名な笑いの法則といえば、天才落語家ともいわれた桂枝雀さんのお笑いの理論「キンカンの法則」です。

 

「キンカン」とは「緊張」と「緩和」の頭文字をとったものです。
桂枝雀さんは笑いの本質について、「人は緊張が緩和された瞬間に笑う」とズバリ断言しました。

 

明石家さんまさんキンカンに法則について、以下のように述べています。

 

「笑いには教科書なんてない。煎じ詰めれば、緊張の緩和だけ。笑わせるためには、緊張させたあとに緩和させればいい。

 

こちらではそんな「キンカンの法則」について、具体例を交えて使い方などをご紹介していきます。

 

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ダウンタウンの番組もキンカンの法則

冒頭に述べたとおり、「緊張が緩和れば笑いがおこる」というのがキンカンの法則です。

 

具体例として、明石家さんまさんは

 

「今日は贅沢するぞー!・・・うどん食べよ」

 

を紹介していました。

 

贅沢をするというから、どんな豪華な料理を食べるのかと思えば、質素なうどんが出てくる。
贅沢という緊張のあとに、うどんという緩和が来る、この異質な組み合わせが笑いを引き起こします。

 

バラエティー番組ダウンタウンさんの「笑ってはいけない」シリーズも、この法則を存分に活用しています。
絶対に笑ってはいけないという緊張状況だと、絶対笑わないレベルのものでも、なぜか爆笑していまうものです。
お葬式で笑いを我慢した話など、緊張のシーンでは緩和が発生すると、笑いを我慢できなかったりします。

 

例えば漫才ではボケ役とツッコミ役に分かれますが、ボケ役の人が実際にはありえないことを言ったりします。
聴衆は「変なこと言って大丈夫かな?」と緊張してから、その後のツッコミで常識に戻されて安心して笑いが起こります。

 

このように「キンカンの法則」は、さまざまな笑いのシーンで使われています。

 

キンカンの法則じゃない話は笑えない

ちなみにダジャレがつまらないのは、「キンカンの法則」に則っていないからともいわれます。
ダジャレはいきなり相手に笑いを強要するようなもので、聞いている方にとっては緊張しかありません。
緩和がないところに、笑いは生まれません。

 

また、エピソードトークをするときなど、自分が笑いながら話すのも「キンカンの法則」に反します。
話し手が笑っていると、逆に場の空気が緩んで「緩和」しかない状態です。
「キンカンの法則」にならうなら、面白い話は真面目な顔で話すのが鉄則です。
真面目な空気がおもしろい話で緩むことで笑いが起こるのです。

 

緩和は納得でも起こる

ボケの達人といわれるダウンタウンの松本人志さんは、青山テルマさんが自分の番組にゲスト出演したときに、「マンションみたいな名前ですけどね」とボケていました。
観客はマンションと聞いて一瞬「?」と感じたあと、「確かに青山テルマとかいうマンションありそう」と納得して笑います。

 

聞き手が思ってもいないことを言うことで、不意打ちで「何それ?」と緊張を作り、「ああ、そういうことか」と納得させて、緊張から緩和へと導いて笑いへと誘っているテクニックです。
このように不意打ちによる緊張から、納得による緊張の緩和という流れでも笑いを生み出すことができます。

 

キンカンの法則で笑わせる

ここまでは、「キンカンの法則」がいかにして笑いを起こすかを説明してきました。
ここからは、日常のコミュニケーションの中で、具体的に「キンカンの法則」を生かす方法を解説します。
普段の会話で使えるような具体例を紹介しますので、是非試してみてください。

 

緊張感を高める「倒置法」

ものを言う順序を逆にすることで、緊張と弛緩を作って笑いを起こす方法です。
キンカンの法則の基本的な使い方の一つです。

 

倒置法キンカンの法則の例

(東京都小池百合子知事「オリンピック予算について」)
「膨れあがるオリンピック予算。一兆、二兆、三兆って・・・豆腐じゃないんですから」

 

小池知事は最初はオリンピック予算が膨大なことを糾弾する厳しい口調でした。
しかし、調子は急転して「豆腐」に例えています。
ここで厳しい口調による緊張から、緩和が生まれ、インタビュアーも笑っていました。

 

これを順番通りに「豆腐じゃないんですよ、一兆、二兆って」と言っていたら、キンカンの法則は活かされず、笑いも生まれなかったと思います。

 

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爆笑を狙わずとも、日常会話でもキンカンの法則を使うと相手の興味を引きつつ、ちょっとした笑いを狙えます。

 

例1

あなた「すごかったですね!」
友達「何が?」
あなた「昨日の大谷翔平選手のホームラン!」

 

例2

あなた「久しぶりにワンピースを着て電車に乗ったら、すごいショックなことあって」
友達「何があったの?」
あなた「妊婦に間違えられて席を譲られた」

 

例3

あなた(無言で顔を見つめる)
彼女「え?やだ顔に何かついてる・・・?」
あなた「「いや・・・今日のお前も美人だと思って」
彼女「もー(笑)」

 

例4

上司「おい、この企画書を誰が作ったんだ・・・?」
部下「あの、私です・・・」
上司「あのな・・・。こんないい企画書、なんでもっと早く出さないの!」

 

例6

あなた「実は、君に話さなければいけないことがあるんだ。感情的にならずにしっかりと聞いてほしい」
彼女「え・・・何?」
あなた「僕と結婚してください!」

 

倒置法で言いたいことを最後にもってくるだけで、インパクトが強くなります。
倒置法による緊張と緩和の作り方は使いやすいので、ぜひ試してみてください。

 

嫌われない自慢話の伝え方

人に嫌われる話の代表といってもいいのが自慢話です。
それでも誰かに聞いてもらいたい、自慢したいときも、キンカンの法則が役立ちます。
キンカンの法則を使って自慢話をすることで、笑いが取れる自慢話にすることができます。

 

自慢話が始まると、「自慢話を聞かされるのか・・・」と嫌な思いをして緊張します。
そこで自虐ネタで緩和させてあげると、笑える自慢話が出来上がります。

 

自虐ネタは人に好かれる効果もあり、芸能人でも自虐ネタでファンの心を掴むテクニックを使っている人は多いです。
アイドルの指原莉乃さんも、「私は可愛くない」と発言したり、自分の熱愛スキャンダルをネタにしたりして、笑いを取っています。
また、テレビで人気のバラエティ番組「しくじり先生」も、オレみたいになるなと自虐トークを披露することで、人気番組となっています。

 

自慢話で相手に嫌な思いをさせたくないならなら、必ず最後に自虐ネタを加えましょう。
「自分はスゴイんだ!」と自慢するよりも、あえて自分からアホになって「面白い人」と思ってもらうほうが、人生が豊かになります。

 

また自虐ネタはグチとも相性がいいです。
グチを聞かされた相手は気が滅入るものですが、自虐ネタで笑いにすれば、面白いグチの完成です。

 

例1

あなた「見てよ!ついにパテックフィリップの時計を買っちゃた!」
友達「すごいじゃん」
あなた「でもローン60回払い。5年は自炊生活。」

 

例2

あなた「昨日、バーベキューで合コンしたんだけど、可愛い子ばっかり揃ってたのよ!」
友達「なんだよ!羨ましいな!」
あなた「でも俺だけ売れ残っちゃった。バーベキュー網の上のカボチャと同じ」

 

例3

あなた「部長はオレのことを全然分かってくれないんだよ!」
同僚「大変だな」
あなた「まあ、俺も自分がよくわかってないんだけど・・・」

 

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予想を裏切る「キンカンの法則」

聞き手は、「次はこういうことを言うんだろうな」と予想しながら相手の話を聞いています。
この予想を裏切るのも「キンカンの法則」が使えます。

 

アメリカの計算認知科学者ハーレー、哲学者のデネット、心理学者アダムズの共著『ヒトはなぜ笑うのか』では以下のように笑いについて解説されています。

 

「自分が思い込んでいた事実と異なる情報が入ってきて、思い込みが間違いだったと気づいたときに笑いが起こる」

 

会話例

主婦A「○○さんの奥さん、転んでお顔をケガされたそうよ」
主婦B「あらら、お気の毒だわ」
主婦A「整形手術で元通りに戻ったんだそうよ」
主婦B「あらら、お気の毒だわ」

 

上記の例では、2回目の主婦Bさんの「お気の毒だわ」が笑いになっています。
聞いている方は「元通りになったんだから良い話じゃない」からの、「元の顔が不細工だったから気の毒なのか」と分かって初めて笑いになります。
このように相手に予想させて裏切ることで、簡単にキンカンの法則を使った笑いが作れるようになります。

 

例1

あなた「定員さんのおすすめは?」
定員「今日はマグロの刺身がいいですよ」
あなた「いいですね!じゃあポテトサラダください」
友達「いや、なんで聞いたんだよ!」

 

例2

あなた「今日の支払いは、俺のクレジットカードで」
相手「おごってくれるの!?」
あなた「ううんポイント貯めたいだけ。半分出して」
相手「いや、ケチ!」

 

当たり前のことを言って笑わせる

キンカンの法則を使えば、当たり前のことを言うだけでも笑いを取ることができます。
例えば、落語の「馬のす」という話も、この方法で笑いを取っています。

 

この話は、釣り好きの男が、切れた釣り糸の代わりに自分が連れている馬の尻尾の毛を3本抜いて釣り糸に使ったところから始まります。

 

(落語「馬のす」)

友人「おまえ、とんでもないことをしちまったな。馬の尻尾なんか抜いて、どうなっても知らないからな・・・」
釣り好きの男「え、馬の尻尾を抜くとマズイのかい?」
友人「ああ・・・タダでは教えられない。しかし俺たちは友だちだからな。酒をおごってくれたら教えてやってもいい」
釣り好きの男「分かった、好きなだけ飲み食いしていいから教えてくれ」

 

(散々飲み食いしたあと)

 

釣り好きの男「なあ、そろそろ教えてくれないか」
友人「そうだな。・・・馬の尻尾を抜くとな」
釣り好きの男「・・・うん」
友人「馬がな・・・」
釣り好きの男「・・・馬が?」
友人「痛がるのさ」
釣り好きの男「・・・え、それだけかい?」

 

文字だけだと伝わりにくいですが、寄席で落語家が「馬の尻尾を抜いたらどんな恐ろしいことが起こるのか?」という謎を緊張感をたっぷり高めてから、ただ「痛がるだけ」とオチをつけると、観客は「なんだ、酒をたかるための作戦か」と緩和して笑ってしまいます。
このように引っ張って当たり前のことをいうだけで、日常生活でも笑いを取ることができます。

 

後輩「飲み会って何が楽しいんですか?」
あなた「ここだけの話だぞ?酒飲むと・・・酔うんだよ。」

 

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権威を失墜させて笑わせる

童話「裸の大様」にもあるように、権威の失墜で笑ってしまうのも「キンカンの法則」です。
例えばチャップリンは以下のようなコメントを残しています。

 

「大臣がバナナの皮に滑って転ぶと、誰もが笑う」

 

このように権威がある偉い人は、既に緊張感をまとっているので、その人がミスをすると落差が勝手に起こって笑いになるのです。
権威の失墜は、相手がミスをしなくても、こちらが上から目線になることでも作り出せます。

 

例えば、上司や先輩、歴史上の偉人を相性で呼ぶだけでも、謎の上から目線が生まれて権利の失墜を引き起こすことができます。

 

例1

友達「俺は歴上の人物なら、織田信長が一番好きだな」
あなた「あー織田ちゃんがんばってたよね。農民上がりのサルちゃん引き立ててさ」

 

例2

あなた「川口社長から金一封が出たよ」
同僚「え、すごいじゃん」
あなた「それが中身は500円玉1つ。川口ちゃんもケチンボだね」

 

例3

後輩「さゆり先輩がカンカンに怒ってましたよ」
あなた「あれ、サユッチ、おかんむりなの?何かしたっけかな」

 

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「キンカンの法則」を使った話の作り方

緊張を緩和させれば笑わせられると分かっても、実際にどう使えばいいか分からないとう場合は、ルール化してテンプレにしてしまうのも手です。

 

テンプレとして話を組み立てるときに「状況」、「謎」、「答え」、「フォロー」のセットを作ります。
話すときには、まず「状況」を説明し、「謎」を投げかけてスタートです。
そして、謎に対する「答え」を明かし、最後に「フォロー」を入れて締めます。
これを守るだけで相手の頭に「?」が浮かんで、最後「なるほど」が生まれるので、キンカンの法則を作ることができます。

 

例えば、牛丼屋でのアルバイトをしてる人が以下の会話を聞いて、笑い話にするとします。

客1「俺は牛丼にしよっかな」
客2「う~ん、俺はブタナマ焼き定食」
客1「ナマ焼きってなんだよ!それショウガ焼きって読むんだよ」
客2「え、そうなん?ずっと勘違いしてたわ恥ずかしい!」

 

店員「注文お伺いします」
客1「牛丼大盛りお願いします!」
客2「ブタナマ焼き定食お願いします!」

 

 

これをテンプレに当てはめてエピソードトークに仕上げると以下のようになります。
「状況」

僕が学生時代に吉野家でアルバイトをしていたとき、二人お兄ちゃんが店に来たことがあったんです。

 

「謎」

その客の一人が、メニューを指差して何と言ったと思いますか?

 

「答え」

「豚なま焼き定食」って。なま焼き!生姜焼きですよ!
これを聞いた瞬間、ボクの生肉の定食が浮かんで、思わず笑いそうになったんです。

 

「フォロー」

吹き出すのを我慢するのが精一杯。もう腹筋が崩壊する前に、厨房に急いで帰りましたね。

 

このように、話し方のパターンとして「状況」→「謎」→「答え」→「フォロー」を使って話を組み立ててみましょう。

 

SNSでキンカンの法則を活用する

若い人はFacebookやTwitter、InstagramなどのSNSを活用している人も多いのですね。
スマートフォンから手軽に投稿できるSNSは、交友関係を広げるのにも便利なツールです。
SNSで「いいね!」等をたくさんもらうための方法はとてもシンプルで、相手にウザがられないことです。

 

SNSはさまざまな人が閲覧しますから、受け止め方も千差万別です。
しかし大半の人がウザがるのが、「自分はこんなにスゴイ、かっこいい、おしゃれ」といった自慢ではないでしょうか。

 

会話でも自慢話は嫌われるのでNGで、これはSNSでも同様です。
しかし、自分の印象を良くしたいと思って、気づかないうちに自慢してしまうことも多いものです。

 

「今日は誕生日。彼女から腕時計をプレゼントして貰った」
「今日は、予約が取れないことで有名な老舗料亭で食事」
「ブーケットの高級リゾートでくつろいでます」

 

つい自慢になってしまいそうなときは、「キンカンの法則」的に自虐ネタを添えて毒を抜くのがおすすめです。

 

「老舗料亭で食事をした」と自慢したら、その後に「お腹はふくれましたが財布が痩せました」、「次の給料日まで、インスタントラーメンの毎日です」などのコメントを添えておきましょう。

 

高級料亭の立派な店構えや、美しく盛り付けられた和食の数々、蔵出しの大吟醸などの写真をアップしたら、自虐ネタを添えて緩和させることで、悪い印象が残らないようにすることが可能です。

 

高級料亭や海外旅行などを例としてご紹介しましたが、自分では自慢しているつもりはなくても、相手から自慢と受け取られることもあります。
投稿前に、コメントと写真はウザくないかを確認し、気になるようなら自虐ネタであく抜きをするする習慣をつけることをおすすめします。
こうするだけで誰もが安心して見られるSNSになり、「いいね!」等の数は自然と増ていきます。

 

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