ピクチャートークで笑わせる|頭の中に映像が浮かぶ話は面白い

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ピクチャートークとは

ピクチャートークが出来ると、面白い話ができるようになります。
ピクチャートークとは落語の基本で、その名のとおり「相手の頭のなかに絵を描くように話す」ことです。

 

人気テレビ番組「人志松本のすべらない話」で披露されるお笑い芸人さんのエピソードトークは、聞いていると映像がありありと浮かぶように工夫されています。
聞き手は頭に映像が浮かぶと、臨場感とリアリティを感じて感情移入しやすくなります。
そうすると共感が高まり、笑いが起こりやすくなるのです。

 

人は映像が大好きです。
小説を読むのが苦手でも、マンガは好きという人は多いです。
小説は文字を自分で映像に変換する必要がありますが、マンガは目の前に絵があるので物語の世界に入りやすくなります。

 

会話でもそのメリットが受けられるよう、相手の頭の中のスクリーンに映像を映し出せるように話しましょう。

 

「おしゃれなドレス」
→「胸元が着物のように重なっていて、ウエストはきゅっと絞られていて、裾はマーメードのように体にフィットしたセクシー度満点のおしゃれなドレス」

 

「おいしい料理」
→「口の中がとろけるほど柔らかく、ジューシーな口溶け感がたまらない」と話したほうが、おいしさが伝わりやすくなります。

 

「嬉しかった」
→「飛び上がったまま宙に浮いた気分になるほど嬉しかった」

 

など、そのときの状況や感情などが、頭の中のスクリーンに映し出されるように意識して話すことが、相手を楽しませる話し方のコツです。

 

ピクチャートークの基本は、まずは自分の頭のなかに思い描くことです。
たとえば自分の飼い犬について話すなら、飼い犬の姿やしぐさを思い浮かべます。
茶色い毛並み、帰宅を待ち構えて玄関に待機している姿、喜んで尻尾を振っている様子など細かな部分まで思い浮かべてください。
そして、その情景をじっくりと観察して、その通りに話すことで自然とピクチャートークが出来るようになります。

 

ビートたけしのピクチャートーク

ビートたけしさんはお笑い芸人として駆け出しだったころ、先輩から笑いの奥義を伝授されました。
それこそが「お客さんの頭の中に映像を映すこと」、ピクチャートークだったそうです。
以降ビートたけしさんは、話す前に映像を作ってから話すようにしたところ、簡単に笑いが取れるようになったというのです。

 

ビートたけしさんは映画監督としても活躍していますが、脚本を書き上げるときに、ほとんど時間をかけないことで有名です。
北野武さんのインタビューを本にした『物語』では、「あの夏いちばん静かな海。」のシナリオは2時間ほど、「アウトレージ2」のシナリオはニューヨークに行くときの飛行機の中で完成させたと語っています。

 

これほどのスピードで脚本を完成させることができるのは、ピクチャートークの練習の賜物だと思われます。
頭の中のスクリーンに映し出される映像を、そのまま脚本に書くことで時間短縮となり、猛スピードで原稿が完成するのでしょう。

 

落語の基本もピクチャートーク

日本の古典的なお笑い落語でもピクチャートークが活用されています。
話術だけで人を笑わせる落語は、状況を頭のなかに映し出すテクニックが必要不可欠です。

 

立川談志さんは、弟子に稽古をつけるときに、

「お前が今、しゃべっている長屋ってぇのは、どんな長屋だ? 間取りは? お前がしゃべっている場所はどういう長屋だ? ご隠居と八五郎の着物はどんな色でどんな柄だ?」

と尋ねて、ピクチャートークを弟子に伝授したそうです。

 

落語を聞いているだけで、ご隠居、熊さん、八っつぁんといった登場人物の表情やしぐさまで感じられるのは、落語家の並々ならぬトーク技術の結晶です。

 

私たちが話すときも、誰かから聞いた話を伝えるよりも、自分の体験談のほうが話しやすいのは、実際に経験したことのほうが映像化しやすいからです。
面白く伝えるためには、まず自分の頭の中に映像を映し出すことがスタート地点です。

 

具体的に話して映像化する

聞く人が映像を映し出せるようにするには、話の細かいディテールも大切です。
細かい部分まで具体的に説明することで、状況描写にリアリティを与えることができるようになります。

 

「飼い主とそっくりの犬を散歩させている人を見た」
→「先週の日曜日、神宮公園に出かけたら、向こうからセントバーナードを連れた、石塚英彦そっくりのオジサンが歩いてきて、セントバーナードの顔も石塚英彦そっくりだった。」

 

後者の方が相手はその状況をイメージできるのではないでしょうか。
抽象的な説明では、頭のなかにイメージを描いてもらうのは難しいので、なるべく具体的に話すよう心がけましょう。

 

具体的に伝えるコツは「いつ(When)」、「どこで(Where)」、「誰が(Who)」、「何を」(What)」、「どのようにした(How)」の4W1Hを意識して話すことです。また数字を使うのも効果的です。

 

例えば京都でオススメのグルメスポットを紹介するときに4W1Hを意識して話すと以下のようになります。

「夏の京都(いつ)なら、京都の奥座敷として有名な貴船の○○という料亭(どこで)がおすすめ。
夫婦で出かけるなら(誰が)落ち着けるよ。
特に、鮎の塩焼きが絶品(何を)。上質の鮎は苔の香りがするっていうけど、京都らしく絶品で一皿で足りなくて、恥ずかしいけどおかわりしちゃった(どのようにした)。ランチなら2,000円以下で楽しめるし。(数字)
京都駅から車で40分ほどだし、町中とは違った魅力が味わえるよ」

 

セリフで映像化する

他にも、エピソードトークをするときは、人との会話シーンが登場することも多いです。
このようなときにも、落語のテクニックが活用できます。
落語では噺家が、それぞれの登場人物を一人で演じています。
落語家一人でも、登場人物になったつもりで会話を演じ分けることで臨場感を生み出しているのです。
是非このテクニックを取り入れてみてください。

 

「昨日、女房の誕生日だったのに忘れてて、怒られるかと思ったけど、どうにかごまかせたよ」
→「昨日、女房の誕生日だったのに忘れてて。そしたら女房が『新婚のころは忘れずにお祝いしてくれたのに、古女房になったら無関心なの?!』って怒りだしてさ、やばい!って思ったから、『だって、お前いつまでたっても年を取らないみたいに若いからさ』ってとっさに答えたら、女房が笑ってさ、ごまかせてホッとしたよ」。

 

奥さんセリフのときは、雰囲気だけでも声真似をすると効果的です。
淡々と状況説明するよりも会話をセリフに変えるだけでメリハリが生まれて、聞き手を惹きつける話し方になります。

 

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